
痛みは、体に危険を知らせる大切なサインです。
熱いものに触れたとき、ケガをしたとき、体の中で炎症が起きたとき、痛みは「ここに注意して」と教えてくれます。
しかし、ケガが治ったあとも痛みだけが残ることがあります。
今回は、痛みを「警報装置」として考えながら、慢性痛がなぜ続くのか、どう向き合えばよいのかを分かりやすくお伝えします。
・慢性的な腰痛、肩こり、首の痛みに悩んでいる方
・マッサージや骨盤矯正で治らなかった方
痛みは体を守るための警報装置
痛みは、体を困らせるためにあるものではありません。
本来は、危険を知らせるための反応です。
たとえば、熱いものに触れた瞬間に手を引っ込める。
足をひねったら、体重をかけないようにする。
指を切ったら、その部分を守ろうとする。
これらは、痛みがあるからこそ起こる反応です。
痛みがなければ、私たちはケガに気づかず、さらに体を傷めてしまうかもしれません。
つまり痛みは、体を守るための警報装置です。
痛みが起こる場面は、大きく分けると二つあります。
一つは、体の中に異物が入ったり、炎症が起きたりしたときです。
ウイルスや細菌が入ると、体はそれを追い出そうとして炎症を起こします。
痛風や偽痛風では、体の中にできた結晶が刺激となり、強い炎症と痛みを起こします。
リウマチなどの自己免疫に関わる病気では、本来自分の体を守るはずの仕組みが、誤って自分の体の一部に反応し、炎症や痛みにつながることがあります。
もう一つは、ケガをしたときです。
転倒、打撲、捻挫、肉離れ、骨折のような分かりやすいケガもあります。
一方で、肉眼では分からない小さな損傷が起きている場合もあります。
筋肉や筋膜に、電子顕微鏡で見るような小さなレベルの損傷が起こることもあります。
このような場合も、体は修復のために炎症反応を起こし、痛みを出します。
痛みが出ることで、その場所を無理に使わないようになります。
結果として、体は回復しやすくなります。
ここまでは、痛みはとても大切な働きです。
しかし問題は、ケガや炎症が落ち着いたあとも、痛みの警報が鳴り続けることがある点です。
本来なら、体の修復が進めば痛みも落ち着いていきます。
ところが、痛みが長く続くと、脳や神経が痛みを覚え、警報装置が過敏になることがあります。
火事は消えているのに、火災報知器だけが鳴り続けているような状態です。
これが、慢性痛を理解するうえで大切なポイントです。
ケガの治療と痛みの治療は別に考える
多くの方は、ケガが治れば痛みも消えると考えます。
もちろん、通常はそうです。
切り傷がふさがる。
捻挫の腫れが引く。
打撲の炎症が落ち着く。
このように体が回復すると、痛みも軽くなっていきます。
しかし、慢性痛では、ケガの回復と痛みの消失が一致しないことがあります。
ここで大切なのは、組織が治ることと、痛みが治まることは同じではないという考え方です。
ケガの治癒とは、必ずしも元通りに完全修復されることだけを意味するわけではありません。
傷が閉じ、体として安定し、日常生活に支障が少なくなれば、修復は進んでいると考えられます。
たとえば、皮膚を切ったあとに跡が残っても、傷が閉じて問題なく動けるなら治ったと考えられます。
筋肉や関節の小さな損傷も同じです。
ところが、組織としては落ち着いているのに、痛みだけが残ることがあります。
この場合、痛みの警報信号が脳や神経に記憶されている可能性があります。
痛みは、電気信号として脳へ伝わります。
ケガや炎症が起こると、痛みを感じるセンサーが反応します。
その情報が神経を通って脳に届き、脳が痛みとして認識します。
この痛みの信号が長く続くと、脳や神経に履歴のように残ることがあります。
パソコンに検索履歴が残るように、脳も痛みの経験を記憶します。
すると、ケガは落ち着いているのに、少しの刺激で痛みを感じたり、同じ場所が痛み続けたりすることがあります。
そのため、痛みの電気信号を早い段階で落ち着かせることは大切です。
もちろん、必要な警報まで無視するという意味ではありません。
骨折や感染、重大な病気が疑われる痛みは、医療機関で確認する必要があります。
ただ、必要以上に警報が鳴り続けている場合は、痛みを感じやすくなった脳や神経を落ち着かせることが大切です。
ここで注意したいのが、画像検査の受け止め方です。
レントゲンやMRIは、骨折や大きな病気を確認するうえで大切です。
しかし、慢性的な腰痛や首肩の痛みでは、画像に映った変化が、今の痛みの原因とは限らないことがあります。
中高年になると、椎間板、半月板、腱板などに変化が見つかることがあります。
しかし、それらは痛みがない人にも見られることがあります。
年齢とともに、いつのまにか起こる自然な変化であり、必ずしも治療対象になるとは限りません。
それにもかかわらず、
軟骨がすり減っているから痛い。
神経が圧迫されているから痛い。
骨が変形しているから治らない。
このように説明されると、患者さんは強い不安を感じます。
自分の体は壊れている。
動くと悪化する。
もう治らない。
そう思うことで、脳や神経の警戒が強まり、痛みの記憶がさらに強くなることがあります。
だからこそ、損傷の治療と痛みの治療は分けて考える必要があります。
体の状態を確認することは大切です。
同時に、痛みの警報が鳴り続けているなら、その警報を落ち着かせる関わりも必要です。
慢性痛は警報を落ち着かせることが大切
慢性痛では、痛みが悪循環を起こすことがあります。
最初は、小さなケガや使いすぎ、長時間同じ姿勢を続けたことがきっかけだったかもしれません。
痛みが出ると、体はその場所を守ろうとします。
筋肉が緊張します。
動きが小さくなります。
呼吸が浅くなります。
交感神経も緊張しやすくなります。
交感神経とは、体を活動モードや緊張モードにする神経です。
短期間であれば、これは必要な反応です。
しかし、この状態が長く続くと、体は休まりにくくなります。
筋肉の緊張が続く。
血流が悪くなる。
眠りが浅くなる。
疲れが抜けにくくなる。
痛みへの不安が強くなる。
このような状態が続くと、脳や神経はさらに敏感になります。
本来なら気にならない刺激でも、痛みとして感じやすくなります。
軽く触れただけで痛い。
少し動いただけで痛い。
天気や疲れで痛みが増える。
痛みの場所が広がる。
こうした反応が出ることもあります。
慢性痛を改善するには、この悪循環をほどいていく必要があります。
そのためには、痛い場所を強く揉むだけでは不十分なことがあります。
神経が敏感な状態では、強い刺激がかえって警報を強めることもあります。
大切なのは、痛みの警報を落ち着かせることです。
まず必要なのは、安心できる説明です。
痛みがあるからといって、必ず体が壊れているわけではありません。
画像に変化があるからといって、必ずそれが痛みの原因とは限りません。
痛みは気のせいではありませんが、脳や神経が敏感になって続くことがあります。
このことを理解するだけでも、不安は軽くなりやすくなります。
不安が軽くなると、脳と神経の警戒も下がりやすくなります。
その結果、体も動かしやすくなります。
次に大切なのは、ソフトな施術です。
慢性痛では、強い刺激が必ず良いとは限りません。
やさしい刺激で筋肉の緊張を落ち着かせる。
関節の動きを無理なく整える。
呼吸を深くしやすくする。
体が守りの状態から抜け出せるようにする。
このような関わりが大切です。
さらに、無理のない運動も必要です。
痛みがあると、動くことが怖くなります。
しかし、動かない時間が長くなると、筋力や体力が落ち、さらに痛みを感じやすくなります。
大切なのは、痛みを我慢して頑張ることではありません。
安心できる範囲で少しずつ動くことです。
短い距離を歩く。
軽い体幹トレーニングをする。
呼吸を整える。
立ち上がりや前かがみなど、不安な動きを少しずつ練習する。
こうした経験を積み重ねることで、脳は「動いても大丈夫」と学習していきます。
慢性痛の改善には、睡眠やストレスの見直しも欠かせません。
睡眠不足が続くと、脳や神経は痛みに敏感になります。
ストレスが強いと、交感神経が緊張しやすくなります。
不安な情報を見すぎることも、痛みの警報を強めることがあります。
だからこそ、慢性痛は体だけでなく、生活習慣や心の状態も含めて見ていく必要があります。
ここから整骨院グループでは、慢性的な腰痛、肩こり、首の痛みに対して、痛い場所だけを見るのではなく、脳と神経、筋肉や関節、体の使い方、生活習慣、不安の強さまで含めて考えます。
マッサージで治らなかった方。
骨盤矯正で治らなかった方。
整体に通ってもすぐ戻ってしまう方。
そうした方ほど、痛みを体の一部だけの問題として見るのではなく、痛みの警報装置そのものを落ち着かせる視点が大切です。
痛みは、本来は体を守るための警報です。
しかし、警報が鳴り続けると、生活を苦しめるものになります。
その警報を少しずつ落ち着かせ、安心して動ける体を取り戻すことが、慢性痛改善の大切な一歩です。
・ケガが治ったあとも、痛みの電気信号が脳や神経に記憶され、警報が鳴り続けることがある
・慢性痛の改善には、損傷だけでなく、脳や神経の敏感さ、不安、睡眠、ストレス、生活習慣まで含めたケアが大切
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